心の変換(1)

No. 10  心の変換 (1)

潜在意識を理解するには、心の特性や働きをよく知っておくことが不可欠な条件である。

「心とは何か」、この疑問を解決していくことによって、潜在意識の理解が大きく前進することは間違いない。

心と潜在意識の関係は、その人の心が分かれば潜在意識も分かり、潜在意識の構成が分かれば、その人の人となりが分かるといったことである。

しかし、前世を含む無意識的要素や人の混乱した不調和な考えなどが、この二つの関係を複雑にしている。

このような複雑要素を除けば、心と潜在意識は同一意識となり、自分自身をよく理解できるようになる。

我々は、正しい理解と順序で自己改革を進められれば、信頼できる新しい自分に確実に変わって行けるのである。

我々が単なる記憶以上の潜在意識を理解するには、自己の個性や特性を表している心というものを、分析して知悉しなければならない。

人が潜在意識に働きかけると言っているのは、深い意味からすれば、創造性のある無意識に働きかけているといった方が適切ではないだろうか。

ほとんどの人は、全く未知な無意識に何も知らない心で働きかけようとしているのであるから、思い通りにならないのも仕方がないだろう。

潜在意識の理解だけでなく、自分の仕事や人生を充実させるためにも、心を知るということは、人が想像する以上に大き効果が得られるのである。

心の働きは多種多様で、一つか二つの特性だけで心を説明することはできない。

また、始めから「心とはこういうものだ」と限定することは、意識やその先に広がる世界まで限定することになる。

世の中は、人の心は信頼できないという風潮が益々強くなって来ている。

人は、心のふれあいとか、心を大切にとか、心から思うとか、心を重視する一方でその反面、心の中で人を憎んだり、恨んだり、また人を傷つける悪いことも考えたりする。

さらに極端な感情表現や競争心も心から生まれる。

暗に人の心を表現する言葉で、人間だから仕方がない、それが人間というものだ、人間らしい、など美化しているのかあきらめているのか分かりにくい言葉がある。

このような言葉を良しとしている以上、人はいつまでも何も知らない混乱だけの心に縛り続けられる。

我々は、人間または自分について、いろいろなことを知っていかなければ、いつまでたっても心から安心が得られないだけでなく、意識的進化も望めないのである。

心の動きを再確認してみよう。

人が心で考えているときは、一体どのような状態になっているのか。

我々が何か考えているときは、ああだこうだ、ああでもないこうでもないなど、心の中で言葉に出している事が多い、しかし意識として認識するときは言葉を出す事はない。

意識について言えば、何かを浮かべた瞬間に、それに関しては自己の認識している範囲内で知っている。
そして、それは心に送られ、必要な順に言葉なり映像で表していくのである。

何かに夢中になっているか寝ているとき以外は、いつも心は動いている。
動くとは、思考か想像をしているということで、何かを思ったり、考えたり、想像(イメージ)したりするのが心の基本的な働きになる。

そしてこの思考やイメージの対象となるのが想念である。

仕事や勉強、そして何かに真剣に向かっているときは、これ以外の想念に邪魔されることもないが、いったん気持ちが何か違う方に興味が向くと、すぐその想念が自分の心を支配する。

このように心というものは、決して静まる事がない。
試しに今、何にも考え思わないように、自分の心を制御できるかやってみると分かる。

目をつぶって、静かな状態で心の中で一言も言葉を出さずに何秒いられるか。
1分出来れば、たいしたものである。

このように心は、いつも何かのことで動き回るが、しかし始めから心がこうなるように出来ているのではない。

それは人間自身が心の働きを、そのようにさせたのである。

人は、何の想念も浮かんでこない静かな心でいることが苦手である。
そのような状態になると、逆に不安が増してくるからである。

人は、普段から不調和の世界にいるため、静かにしているといつの間にか心に不安な感じが押し寄せて来るのである。

人は何も考え思わない、静かな心でいることが、無意識に落ち着かないことだと分かっているのである。

心を制御する事は、非常に難しくて無理なことと思うかもしれないが、全体的に理解が進むにつれて自分の心を支配出来るようになっていくのである。

我々がより完全に心を知るには、いろいろな心の特性や動きを理解し、それからその働きすべてを全体的な心の各属性として捉えるしかない。

心とは何かという答えは、自己の意識が潜在意識にまで拡大していく過程において、自然に意識の中の一部として把握されるからである。

人間は脳で考えているとされている。

しかし脳の中心的働きは、五感から来る情報を処理したりそれについて考えたりすることであり、また脳は記憶の部屋でもある。

未知な事、理論的な展開、思想や自己の人生のことなど、複雑な思考は心で行っている。

医学的なことや心理学を中心に人間を考えていては、いつまでも前進することは出来ない。

我々は、新たな視点から自己の心を知り、またすべての間違がった観念から抜け出すことによって新しい自分を確立していけるのである。